こちらへ引っ越す前、いろんな家を見て歩いた。山のてっぺん付近、はるかな山並みの見渡せる倉が二つもある古民家、立派な池のある住宅、家はよいがすぐ前を車の行き交う道路沿いの家、大きな納屋がある農家風の家、間取りは良いが大きな大きな蜘蛛があちこちに張り付いている家。
この家に入ってすぐ、眼前に広がる海をベランダ越しに見たとき、ここだ!!と思った。
父が船乗りで、小さい頃は出航の度に港で見送りをした。五色のテープがいつもたくさんあって、それを投げ合って別れを惜しんだ。いつも何となく「海」に特別の思いがある。幼い頃からあまり身近にいなかった父への思いなのだろうか。兎に角海の近くで暮らすのが密かな夢だった。
本当は、いつも波の音が聞こえる、映画に出てくるような波打ち際の家や、海岸の崖の上の家に住みたいと思っていた。
現実はそんなにあまくないし、私一人でもない。で、ここに決まった。
海は毎日、いや一日の中でも何度もかわる。晴れた日は遠く島々がいくつもはっきり見える。行き交う船があると、つい数を数える。多いときは20~30隻も数えられて、嬉しくて何度も数え直す。そしてどんどん入れ替わるのでまた嬉しい。時々はヨットや大型の観光船らしき船も通るし、赤や青の色鮮やかなふねもある。小さな船らしき影の時は双眼鏡で確認する。
最近夜の海のステキさに気がついた。少し前まで、ベランダに面した障子は何となく誰かに見られるような気がして寝るときは閉めていた。
が、休む直前にふと見た夜の海のすばらしさ!暗い中にあかりのついたものがたくさん浮かんでいる!
蛍のように動きはしないが、ゆっくりゆっくり右に左に動いている。じっと見ているといくつかの光の固まりが動かないのもある。あれはもしかして漁船で、「漁り火」なのだろうか?遠くに動かないのは島の町の灯りか?
そして空には星!昔のように天の川はみえないけれど、”オリオン座””大熊座””こぐま座”そして名も知らない星々。時には満月から三日月までの月の満ち欠け。間をぬうように点滅する飛行機が動いていく。やっぱりすばらしい!
今はここに住めることを心から感謝している。
日々、刻々変わる海。雪国の人には申し訳ないが、北日本が雪の時は太平洋側は晴天が多い。今年は正月以来晴天続きで海は一段ときれい!一面静かな時も、波頭のたった風の強い日、なみを蹴立てて行き来する船の見える日。見飽きることはない。感謝!
